国土交通省は2月26日、社会資本整備審議会産業分科会不動産部会(部会長=中城康彦・明海大学不動産学部長)を開き、2019年に策定した「不動産業ビジョン2030~令和時代の『不動産最適活用』に向けて~」に基づく取り組み状況や今後の政策の方向性について意見交換した。
同ビジョンは、人口減少や少子高齢化、AI・IoTの進展など社会経済環境が大きく変化する中で、不動産業を「我が国の豊かな国民生活、経済成長等を支える重要な基幹産業」と位置付け、令和時代における官民共通の指針として策定されたものだ。
資料によると、不動産業は次の10年においても成長産業としての発展が期待される一方、社会構造の変化に的確に対応することが不可欠としている。
背景に人口減少と空き家増加
市場環境の構造変化が進行
ビジョンでは、不動産業を取り巻く市場環境の変化として、少子高齢化・人口減少の進展、空き家・空き地の増加、既存ストックの老朽化を挙げている。
加えて、新技術の浸透や働き方改革の進展、訪日外国人の増加、地球環境問題への対応、自然災害リスクなど、多層的な課題が顕在化していると整理した。
消費者ニーズも変化
資料では「所有から利用へ」の志向が強まり、「借地・借家でも構わない」とする回答割合が20年で約6割増加したことを示している。
企業側ではテレワークの導入が進み、オフィスの在り方も変化している。
投資分野では、国連の責任投資原則(PRI)を背景にESG投資が拡大し、不動産投資にも持続可能性への配慮が求められている。
将来像は3本柱

「ストック型社会」実現へ7つの目標
ビジョンは、不動産業が目指す将来像として次の3点を掲げている。
- 「豊かな住生活を支える産業」
- 「我が国の持続的成長を支える産業」
- 「人々の交流の『場』を支える産業」
そのうえで、官民共通の目標として「ストック型社会の実現」「安全・安心な不動産取引の実現」「エリア価値の向上」「新たな需要の創造」「すべての人が安心して暮らせる住まいの確保」「不動産教育・研究の充実」など7項目を設定している。
基本コンセプトは、時代や地域ニーズを踏まえた不動産の形成と、その活用を通じた価値創造の最大化、すなわち「不動産最適活用」の実現だ。
今後の重点課題
資料では、今後10年程度を見据えて重点的に検討すべき政策課題が示された。
具体的には、賃貸住宅管理業者登録制度の法制化をはじめ、不動産の「たたみ方」も含めた出口戦略の整理が挙げられる。
加えて、マンション管理の適正化や老朽化した既存ストックの再生、いわゆる心理的瑕疵を巡る課題への対応も重要なテーマとなる。
さらに、不動産関連情報基盤の充実、情報オープン化と個人情報保護の関係整理、ESGに即した不動産投資の推進も検討事項に位置付けられた。
民間に対しては、AIやIoTなど新技術の活用を進めるとともに、他業種と連携したトータルサービスの提供やコンプライアンス徹底による信頼確保が求められる。
人口減少社会での持続可能性が焦点
不動産業ビジョン2030は、四半世紀ぶりに策定された業界全体の長期指針である。
人口減少社会に本格的に突入する中で、不動産を「つくる」だけでなく、「活かし」「適切にたたむ」視点まで含めた最適活用が問われている。
今回の部会では、これまでの進捗を踏まえつつ、社会環境の変化に対応した政策のアップデートが必要との認識が共有された。
不動産業が国民生活と経済を支える基幹産業として持続的に成長できるかどうか。
官民の連携による実効性ある取り組みが今後の焦点となる。


