ONE SONG / LITERATURE & MUSIC 01

夢十夜 Ten Nights of Dreams

十の夜には、それぞれ違う声と時間が流れている。物語の謎をほどききらずに、一夜ずつ歌にしました。

全11曲・十夜の歌+2026年版ボーナストラック

開いた本から楽譜と鍵盤が夜空へ伸びる『夢十夜』のアルバムアート

THE STORY BEHIND THE ALBUM

高校時代の一曲から、十夜のアルバムへ。

『夢十夜』は、私たちが大学受験の小論文で出会った作品です。本が擦り切れるほど読み返し、その不思議な世界に引き込まれました。高校三年でユニットを組んだあと、相方がこの作品から「夢十夜」という曲を作りました。

今回、原作の十の夜を一夜一曲として歌にしました。最後には、当時のユニット曲を現代の音で編み直し、十夜の印象的な言葉を束ねた2026年版を収めています。こちらは「第十一夜」ではなく、アルバムを閉じる一曲です。

漱石が生きた時代も、いま私たちが生きるAI時代も、世界が変わる速さと人の心の間には距離があります。歌では原作の景色や奇妙さを大切にし、解釈や現代との接点はnoteで一夜ずつ考えていきます。

THE ALBUM / 11 TRACKS

十夜を、順に聴く。

曲が終わると次の夜へ進みます。各曲から再生することもできます。

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FIRST NIGHT / RADIO EDITION

第一夜をラジオで聴く

曲前と曲後の案内、第一夜「百年」をひと続きに。語りと音楽で楽しむ、約7分24秒のラジオ版です。

AI音声の案内を含みます。

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  1. 第一夜 — 百年 のジャケット

    NIGHT 01

    第一夜 — 百年

    「百年待っていて」。白い百合が開くまで、約束の時間を数える。

    歌詞をひらく
    「もう死にます」と
    君は言った
    頬はまだ
    あたたかいのに
    
    黒い瞳に
    僕が映る
    涙が落ちて
    君は死んだ
    
    百年 待っていて
    この場所で
    きっと 会いに来るから
    僕はただ うなずいた
    
    月を映した
    貝で掘り
    君にそっと
    土をかけた
    
    赤い日が昇る
    また沈む
    数えたはずの
    数を忘れた
    
    百年 待っている
    この場所で
    君の言葉が
    まだ聞こえる
    
    石の下から
    白い百合(ゆり)
    胸まで伸びて
    花がひらく
    
    冷たい露(つゆ)に
    口づけた
    
    遠い空に
    星がひとつ
    百年は
    もう来ていたんだね
  2. 第二夜 — 無 のジャケット

    NIGHT 02

    第二夜 — 無

    悟れぬ侍と、迫る時計の音。静けさの内側で苛立ちが膨らむ。

    歌詞をひらく
    侍(さむらい)ならば
    悟(さと)れるだろう
    
    笑った声が
    まだ消えない
    
    灯りをかけば
    影が揺れる
    
    座布団の下に
    短刀(たんとう)がある
    
    次の時計が
    鳴り出すまでに
    
    悟ってみせる
    悟ってやる
    
    無(む)だ
    無(む)だ
    
    線香が
    まだ匂う
    
    無(む)だ
    無(む)だ
    
    何だ
    線香のくせに
    
    噛みしめた歯
    熱い息
    
    膝が痛い
    それでも座る
    
    無が出てくると
    思えば痛む
    
    涙が落ちる
    腹が立つ
    
    胸の内から
    何かがせり上がる
    
    どこもふさがって
    出口がない
    
    無(む)だ
    無(む)だ
    
    笑った顔が
    まだ見える
    
    灯りがある
    畳がある
    
    あってないような
    なくってあるような
    
    無は
    まだ来ない
    
    はっとして
    
    右手を
    短刀(たんとう)にかけた
  3. 第三夜 — 背中 のジャケット

    NIGHT 03

    第三夜 — 背中

    背負った子に道を教えられ、忘れていた罪へ近づいていく。

    歌詞をひらく
    六つになる子を
    背負っている
    
    光のない世界で生きてきたはず
    だけどこの道を知っているようだ
    
    左右は青田(あおた)
    細い道
    
    「その先が
    田んぼだね」
    
    「どうして分かる」
    
    「鷺(さぎ)が鳴くから」
    
    そのあと
    鷺(さぎ)が二声(ふたこえ)鳴いた
    
    やっぱりこの森で
    この子を下ろそう
    
    思ったとたん
    背中で静かに笑った
    
    「おとっさん
    重いかい」
    
    「重くない」
    
    「今に
    重くなるよ」
    
    左へ行けと
    背中が言った
    
    赤い道標(みちしるべ)
    闇に浮かぶ
    
    急いでも
    道はうねる
    
    胸のうちまで
    見透かされている
    
    「もう少し行くと思い出すよ
    ちょうど
    こんな晩だったね」
    
    知っている
    気がしてきた
    
    はっきりする前に
    下ろさなければ
    
    「ここだ
    ここだ
    
    その杉の
    根のところだ」
    
    「ああ やっぱり
    そうだ」
    
    「お前が俺を
    殺したのは
    
    今からちょうど
    百年前だね」
    
    この雨
    この杉
    
    俺は
    人殺しだった
    
    背中の子が
    
    石のように
    重くなった
  4. 第四夜 — まだ見てない のジャケット

    NIGHT 04

    第四夜 — まだ見てない

    手拭いが蛇になる、その瞬間を待つ。じいさんは川の向こうへ。

    歌詞をひらく
    手拭い(てぬぐい)が
    蛇(へび)になる
    
    じいさんはそう言って
    輪を描いた
    
    笛を吹いて
    回っても
    
    輪の中の布は
    動かない
    
    まだ見てない
    蛇(へび)になるところ
    
    もう少しだけ
    見ていたい
    
    箱の中で
    蛇(へび)になる
    
    今に見せると
    歩き出す
    
    柳を抜けて
    細い道
    
    箱を見ながら
    ついていく
    
    今になる
    蛇(へび)になる
    
    きっとなる
    笛が鳴る
    
    橋もない
    舟もない
    
    ここで箱を
    開けるだろう
    
    じいさんは
    川へと歩く
    
    膝から腰へ
    胸まで水に
    
    深くなる
    夜になる
    
    まっすぐになる
    
    まだ見てない
    蛇(へび)になるところ
    
    岸の向こうを
    まだ見ている
    
    葉っぱが揺れる
    箱はもう戻らない
    
    じいさんは
    上がってこない
  5. 第五夜 — まだ鳴くな のジャケット

    NIGHT 05

    第五夜 — まだ鳴くな

    夜明け前に、ただひと目会いたい。白い馬が闇を駆ける。

    歌詞をひらく
    こんな夢を見た
    
    死ぬか
    生きるか
    
    篝火(かがりび)の前で
    死ぬと答えた
    
    ただひと目
    会いたい人がいる
    
    夜が明けて
    鶏(とり)が鳴くまで
    
    まだ鳴くな
    まだ明けるな
    
    あの人が
    ここへ来るまで
    
    女は白い馬の
    鬣(たてがみ)を撫でた
    
    鞍(くら)もない背に
    ひらりと乗った
    
    遠い火をめがけ
    闇を駆ける
    
    髪は後ろへ
    夜をひいてゆく
    
    走れ
    白い馬
    
    火は見える
    まだ届かない
    
    まだ鳴くな
    まだ明けるな
    
    あと少し
    あと少し
    
    こけこっこう
    
    馬の蹄(ひづめ)が
    岩を打つ
    
    夜はまだ
    明けていない
    
    こけこっこう
    
    手綱がゆるむ
    白い馬が折れる
    
    女もろとも
    深い淵(ふち)へ
    
    鶏(とり)ではない
    天探女(あまのじゃく)
    
    岩に残った
    蹄(ひづめ)の跡
    
    この跡が
    消えないかぎり
    
    お前は
    自分の敵(かたき)だ
  6. 第六夜 — 木の中に のジャケット

    NIGHT 06

    第六夜 — 木の中に

    運慶は仁王を「掘り出す」。明治の木を刻む僕には何が見える。

    歌詞をひらく
    運慶(うんけい)が
    仁王(におう)を刻む
    
    明治の人が
    見上げている
    
    鑿(のみ)が入れば
    眉が出る
    槌(つち)が鳴れば
    鼻が出る
    
    木屑(きくず)が飛ぶ
    迷いもなく
    あの手はどこを
    見ているのだろう
    
    作るんじゃない
    中にいる
    木の中にいるのを
    掘り出すだけ
    
    それなら自分にも
    できるだろう
    帰って大きな
    木を選ぶ
    
    ひとつ刻んだ
    何もいない
    次を刻んだ
    まだいない
    
    この木にもいない
    あの木にもいない
    積んだ木ばかりが
    減ってゆく
    
    明治の木には
    仁王(におう)はいない
    
    運慶(うんけい)は
    まだ刻んでいる
  7. 第七夜 — 行き先のない船 のジャケット

    NIGHT 07

    第七夜 — 行き先のない船

    行き先を知らない船から飛ぶ。落ちる途中で、生きたいと思う。

    歌詞をひらく
    どこへ行くのか
    誰も答えない
    
    黒い煙を
    吐いてゆく船
    
    赤い日を追って
    波を切る
    日が沈んでも
    止まらない
    
    遠くの部屋では
    ピアノと歌
    ふたりのほかには
    誰もいないように
    
    どこへ行く
    どこへ行く
    降りる岸さえ
    分からない
    
    星の話に
    声も出ない
    誰かの祈りを
    黙って聞いた
    
    ここにいるのが
    たまらなくなって
    ひとりで夜の
    縁(ふち)を越えた
    
    足が離れた
    そのときだった
    
    生きていたいと
    思ってしまった
    
    まだ水には
    触れていない
    つかまるものは
    もうない
    
    行き先なんか
    知らなくても
    あの船に
    いればよかった
    
    船はゆく
    もう戻れない
    
    水はまだ
    下にある
  8. 第八夜 — 鏡の外 のジャケット

    NIGHT 08

    第八夜 — 鏡の外

    鏡に映る町と、映らないもの。音だけが通り過ぎる。

    歌詞をひらく
    いらっしゃい
    鏡が六つ
    顔の向こうを
    町が通る
    
    帽子の男
    隣には女
    よく見る前に
    通り過ぎた
    
    ちゃきちゃき
    鋏(はさみ)が鳴る
    
    豆腐屋の頬が
    ふくらんだまま
    声は聞こえる
    姿は見えない
    
    見えるものだけ
    見ていたい
    見たいものほど
    映らない
    
    餅をつく音
    すぐそこに
    鏡の中には
    出てこない
    
    格子(こうし)の奥では
    女が数える
    百枚の札が
    いつまでも百枚
    
    数えても
    数えても
    終わらない手を
    見ていた
    
    洗いましょう
    
    振り向けば
    女はいない
    
    表に金魚の
    桶(おけ)が並ぶ
    金魚売りは
    動かない
    
    町だけが
    通り過ぎる
  9. 第九夜 — 今に のジャケット

    NIGHT 09

    第九夜 — 今に

    「今に」と言って父を待つ母子。その言葉が夜の中で繰り返される。

    歌詞をひらく
    お父さまは
    どこへ行った
    あっちと子供が
    指をさす
    
    今にお帰り
    そう教えても
    覚えた言葉は
    今にだけ
    
    今に
    今に
    笑った子供を
    背に結ぶ
    
    暗い杉の木
    石の道
    鈴を鳴らして
    手を合わせる
    
    どうか無事で
    どうか無事で
    声を潜めて
    また歩く
    
    泣けば戻って
    頬を寄せ
    また最初から
    石を踏む
    
    今に
    今に
    夜はいくつも
    過ぎてゆく
    
    待っていた父は
    疾(とく)の昔に
    浪士(ろうし)のために
    殺されていた
    
    こんな悲しい話を
    夢の中で
    
    母から聞いた
  10. 第十夜 — パナマの帽子 のジャケット

    NIGHT 10

    第十夜 — パナマの帽子

    七日ぶりに戻った庄太郎。桃と林檎の先にいたのは、豚の群れ。

    歌詞をひらく
    庄太郎(しょうたろう)が
    帰ってきた
    七日(なのか)も町から
    消えていた
    
    パナマの帽子
    女を眺め
    桃や林檎(りんご)の
    色を褒める
    
    ある日の女が
    重いと言った
    その籠(かご)を持って
    ついていった
    
    電車の先は
    青い野原
    歩いた先には
    底のない淵(ふち)
    
    飛んでごらんと
    女が言った
    帽子を脱いで
    断った
    
    飛ばなければ
    豚になめられる
    
    命には
    代えられません
    
    一匹来れば
    杖(つえ)で打つ
    ころりと落ちる
    また一匹
    
    原の向こうから
    黒い雲
    足の生えた雲が
    鼻を鳴らす
    
    一匹
    また一匹
    
    七日(なのか)
    六晩(むばん)
    
    手がもう
    こんにゃくのようだ
    
    とうとう
    なめられた
    
    女を見るのは
    よくないと
    健さんは言う
    それからにやり
    
    あのパナマが
    もらいたい
    
    庄太郎(しょうたろう)は
    助かるまい
    
    帽子は
    健さんのものだろう
  11. 夢十夜 — Ten Nights of Dreams[2026年版] のジャケット

    BONUS TRACK

    夢十夜 — Ten Nights of Dreams[2026年版]

    高校時代のユニット曲を現代の音に。十夜の印象的な言葉を束ねたボーナストラック。

    歌詞をひらく
    こんな夢を見た
    おまえはもう死ぬと言う
    こんな夢を見た
    俺に無を悟れと言う
    
    ただじっと百年を
    待ち続けていたら
    時計が鳴った
    
    こんな夢を見た
    子供を背負っていた
    こんな夢を見た
    結局 へびにならない
    
    背中の罪を見つめ
    闇の入り口に立つ
    老人(ろうじん)を見た
    
    こんな夢を見た
    女を待ち続けていた
    こんな夢を見た
    仁王(におう)はどこにもいない
    
    馬のひづめを恨み
    大きな木を彫り続け
    生きる意味を知る
    
    こんな夢を見た
    黒い波の中へ落ちる
    こんな夢を見た
    鏡は俺を映した
    
    後悔と恐怖の中
    お前を見続けても
    動かなかった
    
    こんな夢を見た
    世の中はざわついていた
    こんな夢を見た
    お前はもう助からない
    
    とっくに殺されていた
    帽子はあいつのもの
    谷底へ落ちる

READ ALONG ON NOTE

聴いたあとに、もう一度読む。

原作のあらすじ、残った謎、いまの暮らしとの接点を、各夜の記事で少しずつ辿ります。まずはプロジェクトの導入記事から。各曲のリンクから夜ごとの考察も読めます。

十の夜を読む
  1. 第一夜 — 百年 — 物語と考察
  2. 第二夜 — 無 — 物語と考察
  3. 第三夜 — 背中 — 物語と考察
  4. 第四夜 — まだ見てない — 物語と考察
  5. 第五夜 — まだ鳴くな — 物語と考察
  6. 第六夜 — 木の中に — 物語と考察
  7. 第七夜 — 行き先のない船 — 物語と考察
  8. 第八夜 — 鏡の外 — 物語と考察
  9. 第九夜 — 今に — 物語と考察
  10. 第十夜 — パナマの帽子 — 物語と考察
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CREDITS

この作品について

原作
夏目漱石『夢十夜』
構成・歌詞翻案
ONE SONG
制作
ONE SONG(音楽生成にSunoを使用)
2026年版の原曲
高校時代のユニットで相方が作った「夢十夜」