首都圏の新築マンション平均価格が、上半期として初めて1億円を超えました。
同じ時期、国家公務員10万人超への調査では、52.6%が転勤に「できれば行きたくない」「絶対に行きたくない」と回答しています。住宅価格と働き方。一見別々に見える2つのニュースを重ねると、住宅購入の意味が変わったことが見えてきます。
結論から言えば、住宅購入は個人の資金計画ではなく、2人の収入・勤務地・育児・転職可能性を束ねる「共同キャリア・プロジェクト」になりました。住宅ローンの本当のリスクは、金利だけではありません。
- 2026年上半期の首都圏新築マンション平均価格は1億135万円。前年同期比13.1%上昇
- 転勤に否定的な国家公務員は52.6%。共働き・子育て・持ち家がある層ほど拒否感が強い
- ペアローン時代の住宅リスクは「返せるか」だけでなく「2人の仕事を同じ場所で続けられるか」
- 転職先と物件の双方を、勤務地・異動・在宅勤務・育児支援まで含めて選ぶ必要がある
今回つなぐ2つのニュース
| 公開日 | ニュース | 注目すべき数字 |
|---|---|---|
| 2026年7月21日 | 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年上半期」 | 平均1億135万円、前年比+13.1% |
| 2026年7月27日 | JILPT「国家公務員の転勤に対する意識」 | 転勤に否定的52.6% |
※本記事は2026年8月5日時点で確認できる公表資料をもとにしています。各調査の対象・定義は異なります。
ニュース1|マンション平均価格は「1億135万円」
不動産経済研究所によると、2026年1〜6月に首都圏で発売された新築マンションの戸当たり平均価格は1億135万円。前年同期から1,177万円、13.1%上昇し、上半期として初めて1億円を突破しました。
「戸当たりは初の1億円突破」
ただし、「平均価格が上がった=市場全体が強い」とは限りません。発売戸数は7,989戸で前年同期比0.8%減、上半期として5年連続の減少。初月契約率も64.8%で、前年同期から1.8ポイント下がりました。
高額物件の供給が平均を押し上げる一方、供給量と成約の勢いは伸びていない。つまり今の市場は、買いたい人が一斉に高い物件を買っているのではなく、供給される物件が高価格帯へ寄っている側面があります。

ニュース2|転勤に「行きたくない」が52.6%
JILPTが2026年7月27日に掲載した人事院調査の解説では、国家公務員10万7,662人のうち、転勤に否定的な回答は52.6%でした。内訳は「できれば行きたくない」36.5%、「絶対に行きたくない」16.1%です。
「転勤に否定的な意識」が52.6%
注目したいのは、生活基盤を持つ層ほど否定的な割合が上がることです。配偶者が働いている人では57.9%、子どもがいる人では57.3%。未就学児がいる人では63.9%に達しました。
「できれば行きたくない」と答えた人が挙げた事情では、「持家があるため」が41.8%。転勤問題は、働き方だけでなく住宅の問題でもあるのです。
2つのニュースの共通点|固定されるのは家だけではない
1億円規模の住宅を一人の収入で買える世帯は限られます。多くの世帯では、共働き、ペアローン、親からの支援、長期返済などを組み合わせることになります。
一方で、共働きになるほど、片方の転勤に家族全員が合わせることは難しくなります。保育園、学校、親の介護、もう一人の通勤とキャリアが同じ場所に結びつくからです。
この2つをつなぐと、住宅購入で固定されるのは住所だけではなく、世帯の働き方そのものだと分かります。
2人の収入で返済する場合、「世帯年収が高い」だけでは安全とは言えません。2人が同じ業界、同じ地域、同じ景気要因に依存すると、収入が同時に下がる可能性があります。本記事ではこれを、住宅ローンにおけるキャリア相関リスクと呼びます。
ここから見える新事実|会社選びが、物件の資産価値を左右する
これは公表資料に直接書かれた結論ではなく、2つのニュースから導く住まキャリの見解です。
住宅購入時には、駅距離、築年数、管理状態、金利を調べます。しかし、返済原資を生む勤務先について、転勤範囲、在宅勤務の継続性、育児中の働き方、職種変更の可能性まで同じ精度で確認する人は多くありません。
ところが高額・長期のローンほど、会社の人事制度が家計の安全性を左右します。望まない転勤で退職する、通勤負担で片方が時短になる、育児との両立ができず年収が下がる。これらはすべて、物件そのものに不具合がなくても起きる「住宅リスク」です。


私自身、転職相談では「年収が上がる会社ですか?」という質問と同じくらい、「転勤はありますか」「勤務地は選べますか」という質問を受けるようになりました。
以前よりも、住宅購入や子育てを見据えて働き方を選ぶ方が増えており、勤務地や異動制度は年収と並ぶ重要な比較ポイントになっていると感じています。
家を買う前・転職する前に、夫婦で確認したい6項目
- 片方の収入が半年落ちても返済と生活を維持できるか
- 2人の勤務先・職種は、同じ景気要因に影響されないか
- 転勤範囲と、勤務地限定制度の条件はどうなっているか
- 在宅勤務は慣行ではなく、規程として継続可能か
- 保育・教育・介護が発生したとき、どちらが何を調整するか
- 売却・賃貸・単身赴任という出口を現実的に選べる物件か
重要なのは、悲観的になることではありません。家と仕事を同じ一枚の計画表に載せることです。住宅ローンの事前審査に通ることと、35年間無理なく暮らせることは同じではありません。
転職相談でおすすめしていること
住まキャリでは、住宅購入を予定している方へ「物件選び」と「転職活動」を別々に進めないことをおすすめしています。
勤務先が変われば通勤時間や転勤範囲、在宅勤務の可否も変わります。住宅ローンを組んだ後に働き方を見直すよりも、住宅とキャリアを一緒に設計する方が、将来の選択肢を広げやすくなります。
転職アドバイザーとしてのX発信
「年収が上がれば、転職成功!」とは限りません。
基本給・賞与・固定残業代・休日・転勤・評価制度まで確認し、金額だけでなく、その年収を得るための働き方も見るよう発信しています。
専門家解説|「年収を上げてから買う」だけでは足りない
住宅購入を考える方から「先に転職して年収を上げたほうがいいですか」と聞かれることがあります。もちろん収入は大切です。ただ、今回のニュースを見ると、年収額だけで判断する危うさも分かります。
仮に年収が上がっても、転勤が多い、成果給の比率が高い、育児期に同じ働き方を続けにくい会社なら、長期返済との相性は良くないかもしれません。逆に、勤務地と勤務時間を調整でき、専門性を積み上げられる会社なら、額面以上に家計を安定させます。
私は、家を買う前の転職相談では「いくら借りられるか」だけでなく、その仕事を、その場所で、何年続けられそうかを一緒に考える必要があると思います。住宅とキャリアは別の買い物ではありません。どちらも、これからの暮らしを支える同じ設計図の一部です。
住宅・不動産業界で、勤務地や働き方も含めて次のキャリアを考えたい方は、住まキャリの無料転職相談をご利用ください。住宅購入との順序も含めて整理します。
私は転職相談で、「会社は住宅ローンを組むために選ぶものではなく、その家で暮らし続けるために選ぶものです」とお伝えしています。
住宅購入も転職も、一度決めると長く暮らし方へ影響します。だからこそ、年収だけで比較するのではなく、勤務地や働き方、将来のライフイベントまで含めて考えることが、後悔しない選択につながると考えています。
出典(すべて2026年8月5日閲覧)
・不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年上半期」(2026年7月21日)
・JILPT「回答者の約53%が転勤に対して『行きたくない』と回答」(2026年7月27日掲載)









