65歳以上の一人暮らしは933万5,000世帯。国は新しい空き家対策を36件採択しました。
一方、中古戸建の購入に抵抗を感じる人は57.2%。最も多い理由は、価格ではなく「手放した理由が分からない」ことでした。
3つのニュースをつなぐと、空き家問題の本質は単純な買い手不足ではなく、住んでいるうちに家の情報と意思を次の人へ渡せない「引継ぎの空白」にあると見えてきます。そして今後、不動産業界で不足するのは、売買だけでなく、福祉・相続・建物診断・管理をつなぐ「家の引継ぎ人」です。
- 高齢者の単独世帯は933万5,000世帯で過去最多
- 国交省は2026年度の空き家対策モデル事業として36件を採択
- 中古戸建の購入に抵抗がある人は57.2%。最大の壁は「見えない背景」
- 空き家になってから売るのでは遅い。居住中から情報・意思・専門家をつなぐ仕事が必要になる
今回つなぐ3つのニュース
| 公開日 | ニュース | 注目すべき数字 |
|---|---|---|
| 2026年7月8日 | 国土交通省「令和8年度 空き家対策モデル事業」 | 117件の応募から36件を採択 |
| 2026年7月15日 | 厚生労働省「国民生活基礎調査」の報道 | 高齢単身933万5,000世帯 |
| 2026年7月22日 | 中古戸建購入に関する500人調査 | 購入への抵抗57.2% |
※本記事は2026年8月5日時点で確認できる公表資料・報道をもとにしています。各調査の対象・定義は異なります。
ニュース1|高齢者の一人暮らしは933万5,000世帯
厚生労働省の2025年国民生活基礎調査を伝えたTBS NEWS DIGによると、65歳以上の人が一人で暮らす世帯は933万5,000世帯。前年から30万4,000世帯増え、統計開始以降で最多となりました。
高齢者の単独世帯は「統計開始以降、最も多く」なった
高齢単身世帯の増加は、賃貸住宅の見守りだけの問題ではありません。持ち家の場合、修繕履歴、権利証、境界、相続人、家財、売却や賃貸の希望を本人以外が把握していないケースが増える可能性があります。
本人が元気なうちは問題が見えません。しかし入院、施設入居、相続が起きた瞬間、連絡先も建物情報も整理されていない家が「動かせない資産」になります。

ニュース2|国の空き家対策は「活用」から「発生前」へ
国土交通省は2026年7月8日、令和8年度の空き家対策モデル事業として36件を採択したと公表しました。応募は117件でした。
採択テーマを見ると、空き家の相談、異業種連携によるビジネス、二地域居住、AI・デジタル活用に加え、今後の相続空き家の急増を見据えた実態把握・将来予測も含まれています。
「応募総数117件、採択総数36件」
評価資料には、空き家予備軍へのプッシュ型アプローチ、ガス閉栓時に所有者へ接触する仕組み、売買が難しい空き家をいったん賃貸で流通させる手法などが挙げられています。
ここで重要なのは、対策の時間軸です。空き家になった後に広告を出すだけではなく、空き家になる前、または生活インフラが止まる瞬間に介入する方向へ政策と事業が動いています。
ニュース3|中古戸建の壁は「安さ」ではなく見えない情報
マイナビニュースが2026年7月22日に紹介した全国約500人への調査では、中古戸建の購入に「抵抗がある」「どちらかというとある」と答えた人は計57.2%でした。
抵抗の理由の1位は「手放した理由が分からず不安」32.5%。2位は「隠れた欠陥が心配」26.2%でした。安いか高いかより、前所有者の事情、雨漏り、シロアリ、腐食など、見えない背景が判断を止めているのです。
中古戸建への抵抗は57.2%
これは中古住宅に需要がないという話ではありません。価格やリノベーションに魅力を感じ、抵抗がない層も約4割います。買い手候補はいるのに、信頼できる情報へ変換されていない。それが流通のボトルネックです。

3つのニュースの共通点|足りないのは家ではなく「引継ぎ」
3つのニュースは、次の一本の流れでつながります。
- 高齢単身世帯が増える
家の情報や意思を共有する相手が身近にいない世帯が増える。 - 突然、家を動かす必要が生じる
入院、施設入居、死亡、相続で、家財・権利・修繕・売却方針を短期間に整理する。 - 情報が欠けたまま市場へ出る
買い手は「なぜ手放したか」「欠陥はないか」を判断できず、不安になる。 - 売れない・貸せない期間が延びる
管理不全が進み、さらに価値と信頼が落ちる。
したがって、空き家の数だけを数えても問題の核心は見えません。必要なのは、家が市場へ出る前に、本人の意思、権利、建物状態、修繕履歴、近隣情報を一つの引継ぎ情報へ変えることです。
ここから見える新職種|「家の引継ぎ人」が必要になる
これは3つの資料が直接示した職業名ではなく、住まキャリの仮説です。
今後増えるのは、売買契約だけを担当する営業ではなく、居住中から家の出口まで伴走するホーム・トランジション・コーディネーター、いわば「家の引継ぎ人」です。
- 本人と家族の売却・賃貸・維持の希望を記録する
- 権利、境界、修繕履歴、設備、家財の情報を整理する
- 司法書士、福祉、建築士、解体、遺品整理、管理会社をつなぐ
- インスペクションと修繕見積もりで建物リスクを可視化する
- 買主へ「分からない」を残さない物件情報をつくる
- 売れない場合も、賃貸・管理・地域利用へ切り替える
必要な能力は、派手なクロージングだけではありません。傾聴、記録、現場確認、法務の基礎、福祉との連携、工程管理。賃貸管理やプロパティマネジメントで培った「問題が起きる前に整える力」が、そのまま生きる領域です。

私自身、この役割は新しい資格が必要というより、これまで住宅・不動産業界で培われてきた経験を組み合わせて生まれる仕事だと考えています。
賃貸管理、売買仲介、施工管理、リフォーム営業など、一見異なる経験も、「家を次の人へつなぐ」という視点で見ると大きな強みになります。
この変化で経験が評価される5つのキャリア
- 賃貸管理:所有者対応、修繕、入居者調整、継続管理の経験
- 売買仲介・買取再販:査定、告知、出口設計、買主への説明力
- リフォーム・施工管理:建物状態を費用と工程へ翻訳する力
- 相続・不動産コンサルティング:権利者と専門家をまとめる力
- 地域・居住支援:福祉、自治体、NPO、地元事業者との連携力
求人票では「空き家担当」という名前で出ないこともあります。相続相談、オーナーコンサル、物件再生、買取再販、居住支援、地域連携といった業務の中に、この新しい役割が含まれます。
実際の転職相談でも増えているテーマ
最近は「営業を続けたい」だけではなく、「相続や空き家にも関われる仕事がしたい」「オーナーと長く付き合える仕事へ移りたい」という相談も増えています。
今後は、一つの専門分野だけでなく、管理・営業・建築・福祉などを横断できる経験が、キャリアの強みになる場面が増えていくと考えています。
転職アドバイザーとしてのX発信
「年収が上がれば、転職成功!」とは限りません。
基本給・賞与・固定残業代・休日・転勤・評価制度まで確認し、金額だけでなく、その年収を得るための働き方も見るよう発信しています。
専門家解説|売る技術より、決められる状態をつくる技術
不動産の仕事というと、「物件を仕入れる」「契約を取る」という場面が注目されがちです。でも空き家や相続の現場では、その前段階に大きな仕事があります。本人や家族が、何をどう決めればよいか分からない状態を整理する仕事です。
高齢の所有者に売却を急がせるのではなく、今後の暮らしを聞き、修繕・賃貸・売却・保有の選択肢を並べ、必要な専門家へつなぐ。買主には、分からないことを曖昧にせず、調べた結果と残るリスクを説明する。私は、この「決められる状態をつくる力」が今後の不動産人材にとって重要になると考えます。
賃貸管理で地道にオーナー対応をしてきた方、工事の段取りを組んできた方、難しい相続案件で関係者を調整してきた方は、すでにその土台を持っています。売上だけでは語りにくかった経験が、空き家時代には専門性として評価されるはずです。
住宅・不動産業界で、これまでの管理・営業・工事・調整経験を次の成長領域で生かしたい方は、住まキャリの無料転職相談をご利用ください。
私は転職相談で、「物件を見る前に、その会社がどのように人と家に向き合っているかを見てください」とお伝えしています。
空き家時代に求められるのは、契約を急ぐ人ではなく、関係者が安心して次の一歩を決められるよう支えられる人です。そうした仕事にやりがいを感じる方にとって、これからの住宅・不動産業界には新しい活躍の場が広がっていくと考えています。
出典(すべて2026年8月5日閲覧)
・国土交通省「令和8年度空き家対策モデル事業の応募状況及び評価委員会による評価の概要」(2026年7月8日)
・TBS NEWS DIG「厚生労働省の国民生活基礎調査」報道(2026年7月15日)
・マイナビニュース「中古戸建購入で6割が感じる不安とは」(2026年7月22日)









