「施工管理の残業は、どこの会社でもこれくらい多いものなのか?」
「上限規制が始まったのに、休みが増えた実感がない…」
結論から言うと、施工管理の残業には2024年4月から法律の上限がかかっています。原則は月45時間・年360時間で、特別な事情があっても年720時間などの枠を超えることはできません。
一方で、統計を見ると建設業は全産業より出勤日数が月0.8日多く、4週8閉所を達成した現場も大手の集計で67.2%にとどまります。休める現場とそうでない現場の差は、まだ大きいのが実情です。
この記事では、上限規制の中身と公的な統計、転職前に確認したい7項目と面接での聞き方をまとめます。
施工管理の残業にかかる上限規制【2024年4月から適用】

建設業は時間外労働の上限規制の適用が猶予されていましたが、2024年(令和6年)4月から適用されています。一般の業種では2019年4月(中小企業は2020年4月)に始まっていた規制です。
原則は月45時間・年360時間
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせるには、会社が「36協定」(時間外・休日労働に関する労使協定)を結び、届け出る必要があります。その36協定で決められる時間外労働は、原則として月45時間・年360時間までです。
月45時間は、出勤日が月20日なら1日あたり2時間15分です。朝礼前の段取りと夕方の書類作業だけで届いてしまう水準といえます。
特別条項を付けても超えられない4つの上限
臨時的に限度時間を超える必要がある場合に限り、36協定に「特別条項」を付けて月45時間を超えられます。ただし、その場合も次の4つをすべて守らなければなりません。
| 対象 | 上限 | 休日労働の扱い |
|---|---|---|
| 1年間の時間外労働 | 年720時間以内 | 含めない |
| 1か月の時間外労働+休日労働 | 月100時間未満 | 含める |
| 2〜6か月平均の時間外労働+休日労働 | どの期間の平均も80時間以内 | 含める |
| 月45時間を超えられる回数 | 年6回(6か月)まで | ― |
36協定を結ばずに残業させた場合や、協定で決めた時間を超えた場合は労働基準法違反です。協定の内容にかかわらず、月100時間以上または2〜6か月平均で80時間超となった場合も違反で、いずれも罰則の対象になります。
災害の復旧・復興工事だけに認められる例外
災害で被害を受けた道路・鉄道の復旧や仮設住宅の建設といった「災害時における復旧及び復興の事業」には、月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の2つが適用されません。
外れるのはこの2つだけで、年720時間以内と「月45時間超は年6回まで」は災害復旧でも適用されます。災害対応であれば上限がなくなる、というわけではありません。
「時間外労働」と「休日労働」は数え方が違う
見落としやすいのが休日出勤の扱いです。法律上の「休日労働」は法定休日(週1日または4週4日)に働いた時間を指し、月45時間・年360時間の枠には入りません。その代わり、月100時間未満と複数月平均80時間以内は、時間外労働と休日労働を合計して判定します。
参考:建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制|厚生労働省
参考:建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A|厚生労働省
統計で見る建設業の残業時間と休日の実態
「うちの現場は多いのか少ないのか」を測る物差しとして、国と業界団体の統計を見ていきます。
総実労働時間は全産業より月3.8時間長い
厚生労働省「毎月勤労統計調査」2025年(令和7年)分結果確報によると、建設業の一般労働者(パートタイムを除く)の総実労働時間は月164.3時間です。調査産業計の160.5時間より3.8時間長くなっています。
| 項目(月平均) | 建設業 | 調査産業計 | 差 |
|---|---|---|---|
| 総実労働時間 | 164.3時間 | 160.5時間 | +3.8時間 |
| 所定内労働時間 | 150.8時間 | 147.3時間 | +3.5時間 |
| 所定外労働時間 | 13.5時間 | 13.2時間 | +0.3時間 |
| 出勤日数 | 20.0日 | 19.2日 | +0.8日 |
残業にあたる所定外労働時間の差は0.3時間しかなく、差の大半は所定内労働時間と出勤日数から生まれています。建設業の労働時間が長いのは、1日の残業が飛び抜けて多いからというより、出勤する日が多いからだと読み取れます。
出勤日数は月20.0日、1年で約10日の差
建設業の出勤日数は月20.0日で、調査産業計の19.2日より0.8日多い結果でした。単純に12倍すると年間で約10日、労働時間では約46時間の差になります。
なお、この数字は事務職や技能者も含めた建設業全体(事業所規模5人以上)の平均です。施工管理だけの数字ではないため、業界全体の位置を知る目安として使ってください。
4週8閉所以上の現場は67.2%、建築は59.4%
休日の実態を現場単位で追っているのが、日本建設業連合会(日建連)の「週休二日実現行動計画」フォローアップ報告書です。2025年度通期(2025年4月〜2026年3月)の調査では、4週8閉所以上(年間の閉所日が104日以上)の現場が全体の67.2%でした。
| 区分 | 4週8閉所以上(2025年度) | 前年度 | 平均閉所日数(4週あたり) |
|---|---|---|---|
| 全体 | 67.2% | 61.0% | 7.28日 |
| 土木 | 75.6% | 72.8% | 7.52日 |
| 建築 | 59.4% | 50.2% | 7.06日 |
全体では2019年度の26.3%から6年で大きく伸びました。それでも建築では、4週6閉所以下の現場が合わせて27.8%残っています。
調査対象は日建連会員企業(回答88社)の、請負金1億円以上かつ工期4か月以上の現場です。これより小さい戸建住宅やリフォームの現場は入っていません。「閉所」は主たる作業をしていない状態を指し、保安担当者だけが出勤する日も閉所日に数えるため、現場が閉まっていても全員が休めているとは限りません。
「完全週休2日制」と「週休2日制」は別物
求人票でよく見る2つの言葉は意味が違います。完全週休2日制は毎週2日の休みがある制度です。週休2日制は2日休める週が月に1回以上ある制度で、隔週や月2回だけの会社も含まれます。
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」では、何らかの週休2日制を採用する企業が92.6%あるのに対し、完全週休2日制は65.5%でした。残りの27.1%は、月3回・隔週・月2回・月1回などの週休2日制です。
同じ調査で、年間休日総数の1企業平均は112.4日(2024年の実績)でした。建設業の年次有給休暇の取得率は60.7%で、調査全体の66.9%を下回っています。年間休日は「4週8休で104日、そこに祝日・夏季・年末年始が何日乗るか」で見ると比べやすくなります。
参考:毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報|厚生労働省
参考:週休二日実現行動計画 2025年度通期フォローアップ報告書|日本建設業連合会
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施工管理の残業が増えやすい要因と、会社の種類で差が出る理由

同じ施工管理でも、残業と休日は会社と現場で大きく変わります。きつさ全般の背景は「施工管理がきつい理由」で扱っているので、ここでは労働時間に直結する要因に絞ります。
残業を押し上げる5つの要因
- 工期:引渡し日や開店日が動かせず、雨天や納期遅れの分を土曜や夜間で取り戻す
- 書類:施工計画書、安全書類、工事写真、検査記録。日中は巡回と立会いで埋まり、着手が夕方以降になる
- 複数現場:戸建や改修では複数棟を並行して持ち、協力会社や施主からの電話が途切れない
- 移動:現場、事務所、役所、メーカーを回る時間が1日の中で積み上がる
- 発注者・設計変更:仕様変更や追加工事のたびに、図面・見積・工程・発注をやり直す
厚生労働省と国土交通省のリーフレットも、建設業が抱える問題を「工期が短いと、土日も働かなければならず、長時間労働につながります」と説明しています。個人の段取りだけでは残業を減らしにくい理由がここにあります。
国の「工期に関する基準」は残業規制を踏まえて改定された
工期については、中央建設業審議会が2020年(令和2年)7月に「工期に関する基準」を作成し、実施を勧告しています。適正な工期の設定によって長時間労働を是正し、週休2日を確保することがねらいです。
この基準は、上限規制の適用を踏まえて2024年(令和6年)3月27日に改定されました。受注者は時間外労働規制を守れる工期で見積りを出すよう努め、発注者はその内容を尊重すること、猛暑日の作業不能や移動時間も考慮することなどが加わっています。
会社の種類で残業の出方が変わる
| 会社の種類 | 現場の持ち方 | 残業・休日に影響しやすい点 |
|---|---|---|
| ゼネコン | 1つの現場に常駐 | 現場の閉所日がそのまま休日を左右する。竣工前と検査前に負荷が集中しやすい |
| ハウスメーカー | 複数棟を並行 | 施主との打合せや引渡しが土日に入りやすい。現場間の移動が多い |
| 工務店・リフォーム会社 | 少人数で複数現場 | 工程・発注・施主対応を1人で兼ねやすく、代わりがいないと休みにくい |
| サブコン(設備・電気) | 元請の工程に合わせて入る | 前工程の遅れを、工期の後半で吸収する立場になりやすい |
これは一般的な傾向で、同じ種類でも会社ごとの差のほうが大きい場合があります。種類別の違いは「ゼネコン・ハウスメーカー・工務店の施工管理の違い」、住宅分野の忙しさは「住宅施工管理は激務?」で解説しています。
参考:みなさまにお願いがあります!(リーフレット)|厚生労働省・国土交通省
参考:工期に関する基準の実施を勧告(令和6年3月29日)|国土交通省
転職前に確認したい7項目と面接での聞き方

残業と休日は、入社前にかなりの部分まで確かめられます。求人票の言葉をそのまま受け取らず、次の7項目を数字で確認してください。
残業・休日で確認する7項目
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 1. 36協定の特別条項 | 特別条項の有無、延長できる月・年の時間数、月45時間を超えた月が昨年度に何回あったか |
| 2. 固定残業代の時間数 | 何時間分でいくらか。超えた分が追加で支払われるか |
| 3. 年間休日 | 日数と内訳(土日、祝日、夏季、年末年始)。完全週休2日制か週休2日制か |
| 4. 現場の閉所日 | 4週8閉所か、土曜は隔週か。閉所日に出勤する当番があるか |
| 5. 勤怠の記録方法 | ICカードやパソコンの記録など客観的な方法か、自己申告か |
| 6. 直行直帰と移動時間 | 直行直帰の可否、社用車の扱い、現場間の移動を勤務時間に入れているか |
| 7. 代休・振替休日 | 休日出勤のあと実際に休めているか。割増賃金の扱い |
固定残業代は「時間数」と「超過分の支払い」を見る
厚生労働省は、固定残業代制をとる会社に対し、募集要項や求人票へ次の3点をすべて明示するよう求めています(若者雇用促進法に基づく指針)。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
- 固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
「月給◯万円(固定残業代含む)」としか書かれていない求人は、3点がそろうまで他社と比べられません。固定残業の時間数が月45時間に近いほど、36協定の原則の上限いっぱいまでの残業を見込んだ設計だと考えられます。
勤怠の記録と代休の運用で実態がわかる
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日策定)は、始業・終業時刻の記録を、使用者による現認か、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間などの客観的な記録によることを原則としています。自己申告制の場合でも、申告できる残業時間に上限を設け、それを超える申告を認めない運用をしてはならないとされています。
休日出勤の埋め合わせにも2種類あります。事前に休日と労働日を入れ替える「振替休日」は、元の休日に働いても休日労働にならず、休日労働の割増賃金は発生しません。休日出勤のあとで休みを取る「代休」は、休日労働分の割増賃金の支払いが必要です。
面接での聞き方の例
残業や休日の質問は、聞き方しだいで「働く意欲が低い」と受け取られることがあります。入社後の段取りを組むための確認として、事実を尋ねる形にすると角が立ちません。
- 「配属予定の現場は、4週で何日の閉所を計画されていますか」
- 「施工管理の方の時間外労働は、平均的な月と繁忙期でそれぞれ何時間ほどでしょうか」
- 「36協定の特別条項は、昨年度は何か月ほど使われましたか」
- 「固定残業代は何時間分で、超過分はどのように支給されますか」
- 「休日出勤をした場合、振替休日と代休のどちらで運用されていますか」
答えが数字で返ってくる会社は、労働時間を把握できている会社です。条件のよい会社の見分け方は「施工管理は楽すぎ?ホワイト企業の探し方」も参考にしてください。面接で直接聞きにくい項目は、施工管理の転職相談を使い、転職エージェント経由で確認する方法もあります。
参考:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。|厚生労働省
参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
上限を超える残業が続いているときの相談先
月100時間に近い残業や、休日がほとんど取れない状態が続いているなら、転職活動と並行して公的な窓口に相談できます。
まず自分の労働時間を記録する
相談でも転職でも、土台になるのは事実の記録です。次のものを手元に残しておきましょう。
- 毎日の始業・終業時刻と休憩時間のメモ
- 休日出勤した日と、振替休日・代休を取れた日
- 給与明細(時間外手当、休日手当、固定残業代の欄)
- 雇用契約書または労働条件通知書
無料で使える公的な相談窓口
| 窓口 | 相談できること | 受付・場所 |
|---|---|---|
| 労働基準監督署 | 労働基準法などの違反について、行政指導の権限を持つ機関 | 所在地は厚生労働省サイトの一覧で確認 |
| 労働条件相談ほっとライン(0120-811-610) | 違法な時間外労働、賃金不払残業などの電話相談。無料で、匿名でも可 | 平日17時〜22時、土日祝9時〜21時(12月29日〜1月3日を除く) |
| 総合労働相談コーナー | 労働問題全般の相談。予約不要・無料。法違反の疑いがあれば労働基準監督署などに取り次ぐ | 各都道府県労働局、労働基準監督署内など全国378か所 |
ほっとラインは相談専用の窓口で、そこから会社へ指導が入ることはありません。会社への是正を求める場合は、労働基準監督署が窓口になります。
働き方を変える手段として転職を考える
住まキャリは住宅・不動産業界専門の転職エージェントで、求職者は無料で利用できます。まずは施工管理の求人で、年間休日や固定残業代の書き方を見比べてみてください。
よくある質問
施工管理の残業が月45時間を超えたら違法ですか?
36協定に特別条項があれば、直ちに違法にはなりません。ただし月45時間を超えられるのは年6回までで、年720時間などの上限もあります。協定で決めた時間やこれらの上限を超えた場合は法違反です。
休日出勤の時間は、月45時間の残業に含まれますか?
法定休日(週1日または4週4日)に働いた時間は「休日労働」で、月45時間・年360時間には含まれません。一方、月100時間未満と複数月平均80時間以内は、時間外労働と休日労働の合計で判定されます。
求人票の「週休2日制」は、毎週土日が休みという意味ですか?
いいえ。毎週2日休めるのは「完全週休2日制」で、「週休2日制」には隔週や月1回だけ2日休める会社も含まれます。休みの曜日も土日とは限らないため、次の3点を合わせて確認すると実際の休日数がつかめます。
- 年間休日の日数と内訳
- 休みの曜日(土日か、平日を含むシフトか)
- 配属される現場の閉所日
直行直帰の移動時間は労働時間になりますか?
厚生労働省のQ&Aでは、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されている場合は労働時間に当たらないとされています。指示があればすぐ動けるよう現場で待機している「手待時間」や、義務付けられた安全教育の時間は労働時間です。

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まとめ
施工管理の残業と休日は、法律・統計・会社ごとの運用の3つに分けて見ると整理しやすくなります。
この記事の要点
- 建設業にも2024年4月から上限規制が適用され、原則は月45時間・年360時間
- 建設業の出勤日数は月20.0日で、調査産業計より0.8日多い(毎月勤労統計調査・2025年)
- 4週8閉所以上の現場は67.2%、建築は59.4%(日建連・2025年度通期)
- 「週休2日制」は完全週休2日制とは別。年間休日と現場の閉所日で確かめる
次にやること
まずは今月の始業・終業時刻を記録し、自分の残業が月45時間の内か外かを確かめてください。そのうえで求人を見るときは、この記事の7項目を数字で比べましょう。




