インセンティブ制度は住宅・不動産業界において、営業担当者のモチベーションに一定の影響を及ぼすものです。
しかし、設計や運用方法は企業によって異なります。当社にも「自社のインセンティブの割合は他社と比べてどうなのか」などの問い合わせを受けることがあります。
そこでこの記事では、住宅・不動産業界でのインセンティブ制度の現状と、活用方法について詳しく解説します。
「インセンティブ」とは、企業により歩合給や報奨金と呼ぶことがあり、特定の行動を奨励するための報酬で、金銭やモノ、昇進、教育の機会など多様な形をとります。
住宅・不動産業界でのインセンティブは主に金銭的報酬となり、成果を出した場合には平均年収を大きく上回るものとなります。高収入を追求する求職者や成果主義に魅力を感じる人々にとって、モチベーションにつながるでしょう。
しかし、インセンティブの形は業界内でも多様です。一部の企業では、固定給を高く設定しインセンティブの割合を低くしたり、インセンティブを設定していない企業もあります。これらの企業では、自社の理念や文化を訴求し、共感する求職者を引きつけることを目的としています。
営業成績によるストレスを軽減し、安定した収入を提供することで、一部の求職者にとって魅力的な選択となります。
インセンティブは求職者にとっても大きな関心事です。
住宅営業の場合には、具体的にどのようなインセンティブ制度が存在するのでしょうか。新築住宅の営業職を例に挙げた場合、給与体系は以下のベースが一般的です。
固定給(基本給+諸手当)+ 販売に応じたインセンティブ(歩合給/報奨金)
支給例としては、契約時と引き渡し時にインセンティブを半分ずつ支給するパターンがあります。また、粗利金額の一定割合を支給額とするケースや、販売棟数に対してインセンティブを支給する企業もあります。
ローコスト住宅や建売住宅のように、注文住宅に比べ利益率が低い商品に関しては、インセンティブの額も相対的に低く設定されることが一般的です。
(例:1棟一律10万~20万)
前述したように住宅営業のインセンティブ制度は多岐にわたります。以下に具体例を挙げます。
・受注棟数に連動したインセンティブ
注文住宅に特化した企業では、売上や利益率よりもお客様の満足度を重視し、販売棟数に基づいて評価を行うケースが見られます。
ある企業では、年間の販売棟数が増加するごとにインセンティブも上昇します。一定の棟数にいけばインセンティブの料率が増加して、全ての販売に対してその料率を、半年や年間で適用するケースもあります。
・利益率に連動したインセンティブ
ハウスメーカーが注文住宅と建売住宅の両方を取り扱う際、注文住宅は顧客の要望に合わせてカスタマイズ可能な特性から、価格設定の柔軟性があります。
この特性が利益率を高める要因となります。利益率を基準に、営業担当者へのインセンティブも適切に設定されることが一般的です。
もちろん、利益率を基にしたインセンティブを採用する企業が多い中、インセンティブ額を一律に固定する企業も見受けられます。
日々、年収UPや稼ぎたいという候補者からは「応募先の企業のインセンティブ制度を具体的に知りたい」との声が当社に多く寄せられています。これは、求職者にとって成果がしっかり評価されるインセンティブ制度かの確認を含んでいると解釈できます。
特に営業職に興味があり、自分の力で結果を出したい方、また他の応募先と比較・評価したい求職者からの問い合わせが目立っています。
このような現状を踏まえ、自社のインセンティブ制度が求職者の目を引くよう設計されているかを見直してみてはいかがでしょうか。ここで、具体的にインセンティブの活用を考えるための3つの要点をご紹介します。
インセンティブ制度の設計は、求職者の信頼を得るために重要です。具体的な数値(売上目標、KPIなど)の報酬額、報酬の頻度、達成目標と報酬の関係性などを明確に定めることが求められます。
この段階では、企業の方針や目標に合った制度の枠組みを設計し、経営陣や人事担当者など、企業側で制度を設計する関係者が、その機能をしっかり理解することが重要です。
求人広告では、販売棟数や粗利額に対しての年収イメージを記載するとともに、それが実現可能な目標であることを示す証拠も提供します。過去の実績や、同じインセンティブ制度を利用して成功を収めている社員の事例を紹介すると良いでしょう。
インセンティブに特徴を持つ企業に限っては、面接や説明会でも、インセンティブ制度を強調し訴求します。インセンティブ制度の適用仕組みや成果に対する報酬、具体的な事例を交えて説明し、求職者に直接的なイメージを提供します。これにより、求職者は自身の努力や成果が評価され、報奨される環境を明確にイメージできるでしょう。
インセンティブに重きをおいていない企業にとって、魅力的な求職者を引きつける方法は何でしょうか。
具体的なアプローチとして考えられるのは、完全週休2日や残業時間削減などによるワークライフバランスの良さ、安定した固定給や昇給制度の提供などです。特に昇給制度には、結果だけではなくプロセスも評価する明確な指標を設けることが求められます。インセンティブありきの仕事に疲れた求職者に対してもアピールできるでしょう。
しかし、これらの要素だけで一概に人材が集まるわけではなく、企業の全体的な魅力やブランディングも重要となってきます。それぞれの企業が自社の特性や求める人材に合わせた戦略を練り、効果的な訴求を行うことが求められます。
インセンティブ制度の設定は「業界標準だから」という単純な理由からではなく、企業の理念を反映し、その働く意義を表現するための重要な要素です。したがって、採用担当者は自社のインセンティブ制度を深く理解し、その魅力を見込みの求職者に対して効果的に伝える必要があります。
これらのプロセスを採用企業と求職者の間に立ち、よりスムーズで効率的な流れをつくるのが私たちの役割です。
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